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ケーススタディ

香蘭女学校 タナーホール

自然と共に生きる建築。インテリアと建築、そしてエクステリアの融合。

私たちの設計テーマは、自然と共に生きる建築をつくり出すこと。
人間も自然の一部である以上、それを包み込み、生活の場として機能する建築も自然と無縁ではいられません。それどころか長く愛され続ける建築は、インテリアに光や風といった自然の要素を効果的に取り込み、そのエクステリアは周辺環境とも積極的に関係を取り結ぶ必要があると考えます。

香蘭女学校は都心には珍しく緑豊かな築山を擁しています。築山には区指定の保存樹が枝を伸ばしている一方、建築を更新し充実させてゆくためには、その限りある貴重な校地を有効活用することが求められます。
既存の体育館は中原街道とグランド間に余地を残さず建てられていて、片側には築山が迫っていました。片や新施設には、体育館とは別に更衣室と新しく小ホールを確保しなければなりませんでした。そこで、「築山を守る」ことと「大幅な増床」を両立させるための独特なアイディアとして「築山をさらに広げる」というテーマを考えました。
まず体育館のボリュームを丸ごと地下に沈めてしまい、地上に顔を出した残りの部分でアリーナの高窓による自然採光を確保。

そして屋根をフラットとし天然芝を敷き詰めた中に樹木を取り混ぜることで、屋上と築山の緑とをつないでいく。こうして、今まで体育館が占めていた空間に、築山の緑が増え広がる新しいランドスケープをつくり出すことにしました。
屋上部分の築山と対峙した側には、芝生広場を守るような形で小ホールを設け、催しの際に芝生広場や築山と一体利用ができます。芝生広場には石葺き屋根のパビリオンを置き、背景に広がる美しい自然の緑を一層際立たせるように配慮しました。
人々の記憶に残るのは、建物ではなくそこで過ごしたたくさんのシーン。光や風、緑をはじめとする四季折々の風景を建物の中に引き込むことで、自然と共に生きる建築をつくり出すことができると信じています。

開花時期

造園計画者のコメント

松本恵樹有限会社春秋設計工房 代表取締役

心象風景にいつまでも残る“ホワイトガーデン”

タナーホールの造園計画を考えるに当たって、何よりもまず大切にしたのが既存樹林との連続性です。新しくできる建物が既存樹林と一体となって、違和感なくキャンパスの一部として認識できるような植栽に心を配りました。
その上でポイントとしたのが屋上の芝生広場。“ホワイトガーデン”と名付けられたこの庭は、ここで6年間を過ごす生徒たちがその記憶にいつまでも残るシーンを創出するための演出装置としての役割を担ったものです。入学式、体育の授業、放課後、体育祭、卒業式…。季節ごとに繰り返されるさまざまなイベントはいつも白い花が咲く風景と共にそこにある。そんな心象風景を育む場として、この広場が機能することを考えたのです。白い花を選んだのは既存樹木にクチナシが多かったこともありますが、何よりも“白”という色が女子校にふさわしいと思ったからです。
向井さんや宮澤さんとは内井事務所時代からの付き合いですが、ランドスケープに対する意識が非常に高いのでいつも楽しく仕事をしています。建物を見せたがる建築家がまだまだ多い中で、彼らは周辺の佇まいの中に建築があるというスタンスを貫いている。ランドスケープと建築ではアプローチの仕方は異なりますが、何よりも心象風景の一部となるシーンをつくりだしたいという根底の部分ではつながるものがある。これからも彼らと一緒に、“景色の中の建築”、“景色になる建築”、“佇まい”をつくり続けたいと思っています。

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学校関係者のコメント

大森隆夫香蘭女学校 副校長

美意識の共鳴が生み出すオリジナリティあふれる教育環境

香蘭女学校はイギリス系ミッションスクールを源としながらも、日本の文化風土をそこに取り入れた独特の教育方針を貫いている学校です。そこで目指されているのは、西洋文化にいたずらに追従するわけでもなく、日本の伝統文化にしがみつくわけでもない、和と洋が程良く調和した現代日本ならではの教育のあり方です。
当然のことながら、建築もその中に位置づけられてくる。彼らのつくり出す建築は、どこか懐かしさを感じさせながらも現代において立派に機能する新しい提案が随所に盛り込まれている。そうしたセンスが私たちの目指しているものと非常に似通っていると感じています。
また、仕事の進め方にも非常に共感できるものがある。彼らのスタンスは、まずクライアントの話に素直に耳を傾けることからはじまり、その結果出てきた提案にもあれこれ言い合いながら共につくりあげていくというものです。最初の仕事からかれこれ20年以上の付き合いになりますが、長い時間をかけてひとつひとつ建物をつくり続け、現在の姿にまで至ることができたのもこうした姿勢の現れだと深く感謝しています。
現在、香蘭女学校はこの少子化の時代において都内有数の人気のある学校として知られていますが、その一端をデザインの力が担っていることは間違いありません。

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建物撮影:Forward Stroke

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