その空間にいて気持ちいい、その環境を訪れて落ち着く、その建築を見て豊かな心持ちになる…。これらを具現化するために、私たちは“骨太な骨格”とともに“心やさしいディテール”の創造にこだわります。どれだけ素晴らしいコンセプトに基づいてつくられた建築でも、実際に私たちが目で見て手で触れる部分をつくり込むことなしにそれは成立しません。
私たちは、それら内外装のディテールをクライアントの要望に沿ってさまざまにつくり込んでいくネットワークとノウハウを持っています。
『香蘭女学校ビカステス記念館・芝蘭庵』には、そうした私たちの考え方が随所にちりばめられています。学校創立者の名を冠したイギリス式洋館と純和式の茶室、それらは洋と和が無理なく共存するこの学校にふさわしく、茶事の際には洋館が待合いとなり、茶室と一体となって“もてなしの空間”をかたちづくるように考えられています。それら様式の異なる建築を違和感なく連続させることができたのは、ひとつひとつ丁寧に吟味されたディテールの取り合わせによるものです。
● 職人のコメント1
山本明子織部製陶株式会社
営業企画部 次長
B: 質感のあるタイル
記念館の外壁は、光線や見る角度によって微妙な味わいを感じさせたいということで、2サイズのレンガを交互に積み上げていくイギリス積みを採用することに。色合いやサイズがさまざまにオーダー可能な当社の『クレイマスター』という手づくりレンガを指定されたんですが、2サイズの色味を合わせるのがメチャクチャ大変でした。建築に対するイメージを聞く中で、その雰囲気にはこのくらいの色味が合うだろうとか、サイズはこれくらいにした方がいいだろうとか、目地の組み方はどうすればいいだろうとか、他の職人さんたちの仕事の様子も窺いながら仕上がりのイメージを想定して見本焼きを3度も4度も繰り返すことで色味を狭めていきました。エントランスホールに至っては、585mm×285mmという床タイルとしては最大の大きさにチャレンジすることになったので、さらに色あわせが大変でした。
向井さんや宮澤さんたちの仕事はとにかく細部までこだわる。打合せの回数が多いので辟易することもありますが、その分やりがいも大きい(笑)。私たちの持っている技術をフルに使って彼らが目指す建築に参画できることは技術屋として大きな魅力です。何よりも一緒につくっている感じがするし、竣工したときの感激は言葉に言い表せないほどのものがある。打合せから現場での施工、そして竣工まで、タイル屋をやっていてよかったなと心から思える時間をいつも提供してくれています。
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