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ケーススタディ

軽井沢の山荘

性能と品質、そしてコストをバランスさせたコストパフォーマンスの高い建築の創造

私たちが目指しているのは、決してコストをふんだんにかけた贅沢な建築ではありません。むしろ大切なことはクライアントのヴィジョンを実現するために、工法や素材、設備などをコストや気候風土にあわせてよく吟味し、クライアントの立場から最適解を見つけ、コストパフォーマンスにすぐれた建築をつくることです。
長く愛され続ける建築となるためには、快適に暮らすことができる設備、メンテナンスの容易さ、ランニングコストの低減など、空間構成以外にも考慮しなければならない事柄がたくさんあります。コストや使い易さまでをも含めて“骨太な骨格”をつくりあげていくことで、設計テーマと構造、意匠、そして設備が一体となったコストパフォーマンスの高い建築が生まれます。

『軽井沢の山荘』は、そうした私たちの姿勢がよく表れたプロジェクトのひとつだと言えるでしょう。
クライアントのライフスタイル、軽井沢ならではの気候、そしてもちろんコスト面での制約…。これらすべてを精査し必要なものだけを組み上げていくことでこの建築は生まれました。

夏

建築の工夫
軽井沢特有の湿気に対する工夫として、建物全体を地面から1m程度高床にし、設備に利用できる床下ピットをつくった。
南側に12帖の広さを持つ屋根付きテラスを設置することで、南側からの涼しい風が室内を通り抜け、北側の高窓へと導かれる。テラスでは、目の前に広がる雑木林を眺めながら、午後のティータイムを心置きなく楽しむことができる。一日の大半を過ごすLDKは、ワンルーム形式で36帖の広さがあり、片流れの大屋根に覆われている。
設備の工夫
夏の間は、基本的に空調設備を運転せずに過ごすことができるが、うすら寒い春先や秋口に暖房を入れたり、猛暑の時期に冷房を入れることができるように、全熱交換器を組み込んだ24時間気調システム(電気式エアコン)を装備している。また、床下の換気には直接外気を導入せず、室内を通った空気を経由させる工夫を施している。

冬

建築の工夫
この家では下記の理由から、外断熱と内断熱の併用工法を併用した。
外断熱と内断熱を比較した場合、外断熱にした方が、建物自体に対する温度変化が抑えられ、結露が発生しにくく建物の耐久性が確保できる点などから優れているとされてきた。しかし、住宅の断熱性能の目安となるQ値の計算上から考えると、外断熱だけでは徒に断熱材の厚みが大きくなってしまい、現実的でない。そこで本計画では、外断熱と内断熱の併用工法を採用した。
設備の工夫
暖房は、オイル炊きの温水床暖房だけでほぼ十分であるが、補助暖房として電気式エアコンも併用できる。ちなみに電気式エアコンはテレコンシステムを装備しているため、冬の寒い時期、東京で家を出る時にスイッチを入れれば、軽井沢に到着する頃には家中がほんのりと温かくなっている仕組みである。また、床下ピット内にコンクリートで覆われた深夜電力利用の蓄熱暖房を仕込むことにより、冬場の山荘ライフでのトラブルの原因になる「水抜き」の問題を解消している。そのため床下ピット内は、蓄熱暖房と温かな室内の排気のふたつで温められた結果、あたかもオンドルのような形式で室内の温かさを守るとともに、居室と廊下の間でのヒートショック解消にも寄与している。

設備計画担当者のコメント

山本龍英株式会社設備計画研究所

システムと工夫の融合

今回の設備計画のポイントは、以下の4つです。
ひとつめは、給水配管の水抜き作業を不要にしたこと。床下の配管が集中している部分を局所的に深夜電力蓄熱式の電気ヒーターにて凍結に至らない温度に維持する方式を採用することで煩わしさをなくしました。部分的であること、深夜電力であること、冬期のみであることから、ランニングコストを小さくすることができました。また、床下の配管凍結防止目的のヒーターが、床下の底冷えを軽減するという副産物も得ることができました。
ふたつめは、温水式床暖房。天井が高いこの空間では、対流式暖房が天井付近を暖めてしまう傾向にあるのに対し、人体に近い床面からの放射暖房は快適性を得やすく、熱効率の上からも優れている暖房方式と言えます。建物が高気密高断熱であることから、この温水式の床暖房設備を主暖房として取り入れることができました。
3つめは、居室内の24時間計画換気。外気導入に際して室内の熱を回収するように全熱交換機を採用しました。これは外気導入の際に室内からの排気との間で熱交換を行うもので、外気負荷の低減に大きく寄与する省エネ機器です。さらに軽井沢は湿度が高い地域であることから、熱交換の際に除湿を行う機能を持たせています。通常の除湿は過冷却による結露水の排出後、冷えた空気を再加熱することで行っていますが、本計画では過冷却することなく除湿を行う『デシカント方式』を採用しています。
そして最後は、湿気対策としての床下換気。一般には床下換気は外気を使って行いますが、本計画では床下ピットを含めて室内と捉え、室内の空気を最終的に床下ピットを経由して外へ排気しています。これにより、室内環境の快適性を確保しつつ、床下換気を十分に行っています。

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オーナーのコメント

『軽井沢の山荘』施主

年月とともに味わいを増していく建築

軽井沢に山荘を建て、ゆくゆくは終の棲家にしようと考えていたときに、たまたま宮澤さんと向井さんが手がけられたマンションのモデルルームを見て、一度お会いしたいと思ったのがきっかけです。都会暮らしの長い私たち夫婦にとって、山荘と言っても山小屋みたいにはしたくない。かといってマンションのように画一的なものでは軽井沢に住む意味がない。そのモデルルームを見たときに、マンションでありながらあたかも一戸建てに住んでいるような感覚に陥ったのが大きなポイントでした。暖かみがあって質感が上等で。
とくに希望したのは、快適な居住性ということですね。夏の軽井沢の良さを満喫できることはもちろんですが、それと同じように軽井沢ならではの冬の良さも満喫したい。そのための空間と設備がいかにあるべきかということを提案してもらったわけですが、限りある予算の中でよくぞここまでというくらいのアイディアと労力を持って、彼らはそれに応えてくれました。
とくに気に入っているのは、やはり空間構成の見事さとそれに見合う素材の選定ですかね。経年変化が楽しめるというか、時間とともにさらに落ち着いた雰囲気になってくるはずだという期待感がある。落ち着く空間だからか友達も夏冬問わず長居していきます(笑)。
予算の関係で、インテリアデザインはイメージしていた60%程度のものしかできませんでしたが、これから徐々に100%に近づけていこうと思っています。庭の設えも同様ですが、そうしたこともまた大きな楽しみとして現れてきています。それもこれも大元となる骨格の部分で私たちの要望を叶えてもらったお陰だと感謝しています。

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撮影:Forward Stroke

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