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ケーススタディ

千葉英和高等学校 多目的教室棟

人と環境に配慮した生徒たちの“居場所”をつくる

休み時間や放課後における、生徒たちの“居場所”をつくることを目的に、南側のもっとも魅力的な場所に、3層分の天井高を持つ“カフェトリウム”を配置しました。そして、この大空間を中心に、テラスやバルコニー、ベンチコーナーなど建物内にさまざまな“ミニコモン”を鏤めることで、生徒それぞれがどこかにお気に入りの場所を見つけて、仲間との関係性の中でそれぞれの時間を過ごせる“居場所”をつくりだすことを目指したのです。
そのために、これらさまざまな場の設えと同時に、光や空調のあり方などにも配慮。快適な室内環境を生み出すために、自然光や通風など、自然の力を最大限に活かすことを念頭に、意匠計画や設備計画を施しました。垂直方向に伸びた“カフェトリウム”には、煙突効果を利用した自然換気によって、中庭で冷やされた心地よい風が吹き抜け、幕天井や煉瓦透かし積みのシェードを通して自然光を取り入れることで、空間全体が柔らかな拡散光で満たされます。これらの相乗効果によって、快適でサスティナブルな生徒たちにとっての“居場所”が姿を現すこととなりました。

快適な自然換気を促す風の道

心地よい室内環境をもたらすものは、人工的にコントロールされた温湿度環境や照明環境だけではありません。時間帯や天候によって微妙に変化する光の揺らぎ、爽やかに通り抜ける風のそよぎなど、自然の持つパワーを最大限に採り入れた空間づくりに心を砕きました。もちろん、こうした考え方は、省エネルギーにも大きな効果を発揮します。
ここでは、南側と北側の2方向に開口部を設けて風の通り道を確保したほか、トップサイドライトの設置により、煙突効果(空間上部に溜まりがちな暖められた空気の排出口を設け、外部からの涼しい空気の流入を促進させる)を利用した自然換気システムをつくりだしています。

2つのダブルスキンで光と熱をコントロール

ダブルスキンA
南側バルコニー廻りの壁面は、木アルミ複合サッシュのカーテンウォールと煉瓦透かし積みのシェードのダブルスキンとして構成。大きなガラス面を持つカーテンウォールの外側に、煉瓦透かし積みのシェードを設けることで、太陽高度の高い夏季は直射日光をカットするとともに、高度が低い冬期は室内奥まで自然光を届かせる。自然光を豊かに採り入れながらも、夏は涼しく、冬は温かい、心地よい室内環境を実現しています。

ダブルスキンB
一部を鉄骨造とした“カフェトリウム”の屋根には、さらに室内側にも幕天井を設け、ダブルスキン化を図りました。これにより、大空間でありながらも、断熱性、吸音性にすぐれた室内環境を具現化するとともに、トップサイドライトから導入された自然光や人工照明を拡散させる反射板としての役割を持たせることで、 柔らかな拡散光で満たされた、居心地のよい室内環境を生み出すことにも貢献しています。

学校関係者のコメント

大羽 聡千葉英和高等学校
副理事長・副校長・事務長

今回の「多目的教室棟」を建てるにあたって、視聴覚室や器楽練習室をはじめとする教育環境の充実とあわせて私たちが目指したのが、生徒たちの居場所の創出です。既存校舎群が片廊下型教室中心となっているため、休み時間やランチタイム、放課後に生徒達の居場所が無く、終日同じ教室で過ごすことを余儀なくされている校内環境を改善し、豊かでメリハリのある学校生活を送ってもらうことがその目的です。
そこで、安定した採光が望める北側に各種教室、もっとも居心地のよい南側に生徒たちの“溜まり場”を配し、この構成を骨格に、生徒たちそれぞれが思い思いに時間を過ごせるさまざな居場所を鏤めて欲しいという要望を出すこととなりました。
実際にできあがった空間にはとても満足しています。緑の芝生に覆われた中庭に繋がる開放的な開口部、その上部に取り付けられた煉瓦透かし積みのシェード、垂直方向の伸びやかな空間を優しく包み込む膜天井とその下に吊り下げられた特注ペンダント、吹抜けの周囲に設えられた2階レベルの室内テラスとそれらに連続した屋外テラスなど、どの部分をとっても、温もりのある素材使いと意匠によって快適な居場所がつくりこまれている。
とくに私たちが感銘を受けたのが、光や風をはじめとする自然が持つ力を効果的に採り入れた環境づくりです。煙突効果を利用した自然換気や、煉瓦透かし積みのシェードや膜天井を通した柔らかな自然光の導入などの相乗効果によって、昼間の照明電力の大幅削減はもちろん、厳しい暑さの夏の間も冷房設備を特に動かすことなく快適に過ごせたことにはとても驚かされました。
休み時間やランチの後、そこかしこで生徒達のいくつものグループが楽しそうに談笑している姿が見受けられるようになり、今までは授業が終わるとすぐに帰宅していた生徒達が、放課後、コモンルームに居残って自習をするようになったことも大きな収穫です。この「多目的教室棟」の竣工をきっかけに、こうした環境づくりを校内のさまざまな場所に波及させていきたいと考えています。

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撮影:Forward Stroke

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