DESIGNfirm

ケーススタディ

東京原木会館 木族Networks リノベーション

無垢材加工技術の粋を集めたリノベーション

東京原木協同組合の交流施設「原木会館」敷地内に位置する既存管理棟を、木材のさらなる普及促進を図る文化事業の活動拠点としてリノベーションするにあたり、私たちが心がけたのは、“無垢の木(原木)の良さを再発見できる体感型ショールーム”としての空間づくりです。
振り返れば木材は、常に私たちの身近にありました。住まいをはじめとするほぼすべての建築物が木造でつくられ、建具や家具、日用品など、さまざまに加工された木材に囲まれた中で日常生活を送ってきた私たち日本人。そうした歴史と文化によって培われた木材に対する知恵や技術、実感や思いなど、情報やマニュアルだけでは伝えきれない“木の文化”を継承発展させていくためには、その魅力を実際に体感できるハードとしての建築が必要だと考えたのです。
そこで、いまでは希少となってしまった知恵や技術の粋を集めるために、東京原木協同組合ならではのネットワークをフルに活用させていただき、樹種の選定から加工や仕上げ、そして施工までを、専門の職方たちのアドバイスを受けながら、エクステリアやインテリア、家具や建具などを、ともにつくりあげていくこととなりました。

無垢材の魅力を活かした“体感型ショールーム”

エクステリア

【外装】
外部ルーバー:レッドシダー4寸角 L=4000、柿渋塗り(西川本店)
小口塞ぎ:真鍮t=5(辻マーク)
既存建物外壁:ケレン補修後 FMX左官塗り(フッコー)

【外構】
ルーバー下たたき:伊勢ゴロタ3寸丸 敷き並べ
外構床:瓦左官(ぬり貫)
植栽:葛垣(ゴバイミドリ)

【エントランス】
外部階段:レッドシダー W180×H80 柿渋塗り(西川本店)
玄関扉:レッドシダー4枚剥ぎ t=60 柿渋塗り(西川本店)

既存建物はボックス形式の壁式構造であったため、壁量計算を確認した上で、一部開口部を増設した以外は既存躯体をそのまま生かすこととし、そのボックスに、4寸角のレッドシダーを小間返しに、既存建物の正面を覆い隠すように斜めに取り付けました。これは、一見、原木を立て懸けて保管する「林場」を想起させるとともに、入口を躙口のような設えにし、木の森に分け入るイメージのファサードに一新するためです。
この木ルーバーは、4寸角のレッドシダーにラフソーン(鋸目挽き)仕上を施し、柿渋を塗ったものです。耐久性と強度、加工性に優れ、カナダの先住民から「生命の木」と呼ばれたカナディアン・ウェスタン・レッドシダーをラフソーン(鋸目挽き)仕上とすることで、この素材の持つ存在感、質感、息吹までも最大限、引き出すことができると考えたのです。また、ルーバーが持つ本来の機能である、自然の光と風の透過性、プライバシーの確保に加え、「木の文化」の継承・復権拠点の「ショールーム」に相応しいファサードをこのレッドシダーのルーバーに担って貰うこととしました。
ルーバー上端部には、真鍮製小口キャップ(辻マーク)を取付け、レッドシダー材の耐久性を高めるとともに、木を大切にする心をデザインの一要素として表現しています。またルーバーの足元にはアートガラスによる特注照明を据え、夜のファサードを引き立てています。また、80㎜厚みを持つレッドシダーの外部階段段板を降りた廻りに、緑の葛垣(テイカカズラ:ゴバイミドリ)を据え、殺伐とした駐車場の中に、小さいながらも「園」を創りました。

インテリア

【廊下・展示コーナー】
床:チークフローリング W=90乱張り t=15
巾木:チーク H=45
壁:硬質ウレタンフォーム吹付け t=20の上、PB t=12.5GL工法、西洋漆喰塗 t=3(ぬり貫)
天井:レッドシダー 140×15 ラフソーン・スムース仕上 柿渋塗り(西川本店)
ルーバー:レッドシダー3寸角 銀杏面、瓢箪面交互 柿渋塗り(西川本店)
サインクラフト レッドシダー t=45 柿渋塗り(西川本店):(長谷木)

【サロン・ブラウジングコーナー】
床:チークフローリング W=90乱張り t=15
巾木:チーク H=45
壁:硬質ウレタンフォーム吹付け t=20の上、PB t=12.5GL工法、西洋漆喰塗 t=3(ぬり貫)
天井:レッドシダー 140×15 ラフソーン・スムース仕上 柿渋塗り(西川本店)
特注楕円テーブル:サペリ2枚剥ぎ 1350×2400 t=50 H=720(協和木材)
特注ペンダント:1240φ グラスクロス張り LED照明(ヤマギワ)

【会議室打合せコーナー】
床:チークフローリング W=90乱張り t=15
巾木:チーク H=45
壁:硬質ウレタンフォーム吹付け t=20の上、PB t=12.5GL工法、西洋漆喰塗 t=3(ぬり貫)
置き家具:既製品(天童木工)

事業拠点となるサロンや会議室のインテリアも、とても重要であると考えました。主な仕上材は、床:チークフローリング、壁:熟練した左官職人(ぬり貫)による西洋漆喰、天井:ラフソーン仕上のレッドシダー縁甲板目透かし張り柿渋塗りなどです。
また、ガラスクロス張りの特注照明(ヤマギワ)、サペリ材特注テーブル(協和木材産業)、レッドシダー材の扉や特注収納家具などを組み入れることで、より無垢の木とのハーモニーが感じられるようなインテリアを目指しました。
これらは、「木」の廻りに集う製材職人、大工、家具・建具職人、左官職人、特注照明職人など多くの職方の長年に亘って培われた知恵や技術、手業を集結したものです。レッドシダーの無垢板に丁寧な細工を施したサインクラフト(長谷木)も、ウエストコーストスタイルの質の高い工芸品です。
外部のルーバーだけでなく、インテリアにもふんだんに無垢の木(原木)を使用しましたが、これは同じ広さの木造家屋のおよそ2軒分の物量に相当します。

関連トピックス

→2013.01.29東京原木会館 木族Networks が竣工しました。
→2012.11.21東京原木会館 木族 Networksで 無垢の木テーブルを作りました。

クライアントのコメント

夏目 攻木族Networks

東京原木協同組合は、1952年、木場の由緒ある貯木場「六番堀」を守るために、原木を扱う木材卸売業・製材業を営む事業者によって設立された団体です。しかし時代の趨勢と共に、工業製品に押されて原木の流通量が少なくなり、また、木材業界の拠点が木場から新木場へと移るなか、組合員相互の絆を深めつつ、組合員のための共同事業を行う団体へとその性格を変えることとなりました。
そうした中、2004年「木を生業とし、木に支えられているわれわれは、木に感謝し、木に恩返しをしなければならない」という熱い思いから、木材活用推進協議会を発足させ、木の良さ、木の魅力を広く世に訴えるべく、シンポジウムの開催などをはじめとする木の文化事業への取り組みを開始しました。そして2012年、組合創立60周年を記念する事業として、木の文化事業を発展させ、よりリアリティーのある事業とすべく、“木場ブランド”と“最終消費者”を結び付ける、建築家やデザイナー、建築工事関係者など、木と関わりを持つ人々、木に対して志を同じくする人々を繋げる「木族Networks」を構築することとなりました。そして、その活動拠点として、原木会館の敷地内にあった管理棟をリノベーションし、活用することにしたのです。
私たちの要望は、ただひとつ。現代的な感覚で伝統的な材料や技法を解釈し直し、木材の持つさまざまな魅力を体感できる場を設えて欲しいということでした。木材の魅力は、写真や映像では決してそのすべてを伝えることはできない。それが実際に使われた空間に身を置いて、手で触り、足で踏みしめ、匂いを嗅ぎ、その暖かみや存在感を五感をフルに使って感じ取ることによってはじめて、木材の本当の魅力を理解することができるからです。そして、それが伝統に縛られた古色蒼然とした空間ではなく、現代的な感覚で表現された空間の中で具現化されることが何よりも大切だと考えたのです。
そのために、デザインファームの先生方には、どの木材をどの大きさで用意できるか、どういう仕上げ方や工法があるのかなど、私たちが持っているノウハウを惜しみなく提供するとともに、何度も製材工場や製作工房に足を運んでいただいて、木材に対する理解を徹底的に深めていただくことに心を砕きました。
こうした設計と製作の密接なコラボレーションにより、この建物が私たちが推進する文化事業の活動拠点として、木に対する同じ志を持つ人達を結び付ける触媒となり、存分にその役割を果たせるものとして姿を現したことを、関係者ともどもたいへん喜んでいます。

▲ ページトップへ

撮影:川澄・小林写真事務所

Copyright(C) DESIGNfirm Inc. Reserved.